ハイドロサー� (Hydrotherm)の予約が入った。SPAのマッサージ・メニューの一つであるが、ロミロミやスウェディッシュほど知られていない。この最高にリラックスできるマッサージをもっと多くの人に知ってもらう為にSPAの今月のスペシャル・メニューとして30%Off(これはかなりお得!)を広告に出している。
M子はお客様に気に入っていた� ける期待いっぱいで準備を始めた。2つの温水マットにお湯を注入する。かなり重たい。温度は華氏95度もしくは摂氏35度でなければならない。お客様はこの温水マットの上にじかに肌をつけ50分間も横になるので熱すぎるとのぼせる危険性があるし、ぬるすぎても気持ちが良くないの� 。慎重に温度を調節する。そしてお客様が現れるまで温水マットが冷めないように上からタオルをかけた。アロマキャンドルに火をつけ、照明を落とし、ヒーリングミュージックを流す。M子の顔に余裕の笑みが浮かん� 。準備は万端� 。そして小麦色に焼けたスレンダーな白人ミセスがやってきた。丁重に挨拶、自己紹介をしてお部屋にお通しする。ハイドロサー� の説明を始めたところで彼女のモデルのように美しい表情が曇った。
「ヴィシ・シャワーではないの?」
ヴィシ・シャワーとは、ボディー・エリクサーというメニューで使うシャワーのことで、これはウエット・ルー� でしか施術できない。M子は大いに焦った。ウェット・ルー� は空いているが、運悪く今日は多量の商品の搬入があり、ウエット・ルー� にダンボール箱が山積みにされている。ヴィシ・シャワーを使うには、このダンボール箱を移動しなければいけない。それに� えM子自身もずぶぬれになるので着替えも必要� し、化粧もとれるし、髪もぬれてしまう(この後友達と食事に出かけるのに~っ(汗)。M子は願う気持ちでもう一度お客様にハイドロサー� を勧めてみた。が、彼女はこのウエット・トリートメントをとても楽しみにしていたという。しかたがない・・・うううっ・・いいのよ、いいのよ、私はいいのよ。お客様さえ幸せになってくれれば(涙)。M子は覚悟を決めた。
「私に20分の時間をく� さい」
お客様にバスローブとハーブティーを渡し、お部屋で待ってもらう。
小さい体で大きなダンボール箱を次々に運び出し(ばか力が出るもの� )、シーツを取り替え、いくつもの新しいタオルを準備し、オイル・ウォーマーにスイッチを入れ、赤外線ライトをつけ部屋を暖める。アロマオイルとボディー・スクラブを彼女のために選ぶ。あわててミスしないよう深呼吸。� �の中で手� �をシュミレーションして準備ができた。
「サンキューフォーウェイティング」とお客様をこのダイナミックでエキゾチックなトリートメント「ボディー・エリクサー」へとご案内する。彼女は念願のヴィシシャワーを受けることができて、とてもご満足していた� いた。今日もスパ仕掛け人M子はほっと胸をなでおろすのであった。(完)